障害科学研究
Online ISSN : 2432-0714
Print ISSN : 1881-5812
原著
日本の高校における自閉症スペクトラム傾向のある生徒の精神的健康状態
酒井 貴庸園山 繁樹
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2021 年 45 巻 1 号 p. 43-51

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抄録

高等学校における特別支援教育の支援体制の整備は、小学校および中学校に比べて遅れている。一方で、高校生を含む思春期においては、自閉スペクトラム症 (ASD)の特徴をもつことは、精神的健康状態のリスクとなり得る。そのため、高校生におけるASD傾向の程度と精神的健康状態の関連を質問紙調査によって検討した。ASD傾向が高いと、精神的健康状態が悪く、ASD傾向の高さにより、精神的健康状態を推定可能であった。また、学校間で教師のASDに関する知識の程度に差がある場合においても、生徒のASD傾向と精神的健康状態との関係は同様であった。これらの結果から、高等学校においては、ASDの診断の有無に関わらず、ASD傾向のある生徒への特別な支援や配慮の必要性が示された。また、高いASD傾向をもつ生徒を担任している教師であっても、ASDについて十分な知識をもつ教師は少なかったため、知識の程度に応じた研修を受け、支援体制を整える必要性があることが示唆された。

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