2022 年 46 巻 1 号 p. 1-12
本研究の目的は、言語のワーキングメモリ容量を測定するリーディングスパンテスト(RST)に関わる処理の分析を通して、聴覚障害者のワーキングメモリ方略について、コミュニケーションモードの相違による特徴を明らかにすることであった。聴覚障害者30名を対象とし、主なコミュニケーションモードをもとに口話群と手話併用群に分類した。RSTと心像度が異なる2 つの漢字単語の記憶課題を実施し、RST遂行時のターゲット語の記憶方略の違いと課題間の関連を検討した。研究の結果、両群のRST得点に差はなかったものの、口話群では意味情報を活用した記憶方略が用いられ、高心像度課題との相関関係が示されたことから、意味的符号化に関する処理や方略の利用における効率性がRSTと関連すること、一方の手話併用群では音韻情報や視覚情報に関する記憶方略が用いられ、低心像度課題との相関関係が示されたことから、音韻コードの利用における効率性がRSTと関連することが示唆された。