2023 年 47 巻 1 号 p. 109-121
本研究では、小学2年生の盲児1名に対し、小学部社会科点字教科書に掲載されている地図の読解に向け、具体物教材と図を往還的に用いながら、図の読み取り能力育成のための導入的指導の実践を行った。指導前に実施した課題では、図の特徴を直観的に捉える姿が目立ち、図の読み取りに関する困難さの一つに全体と部分の位置関係の理解があることが明らかとなった。そこで指導時には、座標や枠など外部の基準を有する「はめこみ教材」「ひもとおし」「オセロ」の3種類の具体物教材を活用し、これらと図を対応させるとともに、触察から得られたイメージの言語化を重視した。指導後に、指導前と同一の課題を実施したところ、より正確な位置で各記号を捉えられるようになり、全体との位置関係を踏まえた図の読み取り能力の向上が確認できた。また、課題構成時の児童の指の動きの分析からは、枠などとの位置関係を意図的に確認する行動の増加が読み取れた。