2023 年 47 巻 1 号 p. 95-108
外国にルーツのある子どもの学習困難は、言語環境に起因する第二言語の低い習得度が原因と判断されやすく、学習障害と特定されるまでに時間がかかる。本研究は、これに該当する中学2年男児を経験したので報告する。客観的な検査により、本事例の語彙・読み書き能力は小学校低学年以下であり、文字習得に関与する認知能力に弱さがみられた。本事例の約11年という在日期間を考えると、本事例の低い日本語能力を環境要因のみでは説明できず、学習障害が疑われた。小中学校では、言語環境に起因する学習困難と考え、学習障害が疑われることはなかった。本事例を通して、外国にルーツのある子どもへの指導経験が教員に不足している、外国にルーツのある子どもの学習困難の背景に学習障害があるという可能性が教員に認識されていないことなどが原因で、外国にルーツのある子どもは学習障害に関するアセスメントにつながりにくいという現状があるように思われた。