地球の陸域の表面は,ミクロコスモスと呼ばれる生態機能を有する土壌で被覆されているが,その厚さはたかだか,200cmたらずの薄い土層である。この薄い土層の中で営まれる物質循環機能を通して,土壌は地球に安定な環境を作るべく,大きな役割を果たしている。湿潤地域に広く分布する黒い土色を有する土層は有機物を多く含み,数多の種類の生物を住まわせ,それらの働きを通じて,炭素,窒素,硫黄など多くの生元素(生物体を構成する元素)の物質循環を行っている。また,乾燥地域に分布する土色は明るい土層は生元素の物質循環を駆動させるほどの生物活性こそ低いが,アルベドを通して太陽からのエネルギーと大気の循環にきわめて大きな役割を果たしていると見られる。このように土壌は,どの地域の土壌であっても,地球環境の安定的な維持に一定の役割を果たしている。一方,人類はこの薄い土層のさらに薄い部分を耕し,種子を播き,自らの生命を維持する糧を得てきた。農業というこの生物生産の方法が,2,000年以上にわたって基本的には何らの変更もなく継続されてきたことは,地球上での生物生産はこの方式がもっとも合理的であり,持続的であることを示唆している。しかしながら,人類は一方では,飽くなき富の追求を土壌資源に求めた結果,世界の各地で深刻な土壌荒廃(砂漠化)と土壌汚染を大規模に引き起こしている。ひとたび土壌荒廃が進むと,地球環境は不安定さを増幅し,安定な地球生態系の維持が困難になってくる。なぜならば,地球環境を構成する因子が乱れれば,安定であるはずの地球環境も脆弱な状況になることも考えられるからである。昨今の異常気象がその兆候とする直接的な科学的根拠はないが,破滅的な状況が到来する前に,身の回りの小さな土壌環境から,地球規模の大きな土壌環境まで,持続可能な道を求めて,真剣に議論し,とるべき行動を追求していかなければならない。