2016 年 17 巻 1 号 p. 31-38
アロマテラピーの歯科矯正治療に伴う歯痛の緩和効果を評価することを目的とした。
被験者は歯科矯正治療で上顎左右第一大臼歯の近遠心に歯間離開を行う患者48名(平均26歳5カ月,男性19名,女性29名)とした。最小化法でラベンダー,ペパーミント,プラセボ(精製水)の3群へ割り付けし,歯間離開開始48時間後にアロマテラピーを1時間行った。歯間離開直後,3, 6, 12, 24, 48時間後,アロマテラピー開始30分後,1時間後に自発痛の評価をvisual analogue scale(VAS)で行った。また,歯間離開直後,48時間後,アロマテラピー開始30分後,1時間後に,打診痛のVASによる評価を行った。さらに,アロマテラピー施行中は近赤外線分光法(NIRS)で血中の酸化・還元ヘモグロビン量を1時間観察した。また,アロマテラピー施行前後にProfile of Mood States(POMS)のアンケートを行った。VASとNIRSによる評価によりラベンダー群は最初の30分は歯痛緩和の効果がみられ,ペパーミント群はラベンダー群より効果がみられた。また,POMSの評価は吸入後にすべての項目で減少した。以上よりアロマテラピー吸入法が,歯間離開における歯痛に対する緩和効果をもたらす可能性が示唆された。