精油の香りの記憶を助ける観点から,揮発特性を蒸気圧と関連付けたマップ創生を本研究の目的としている。揮発特性計測には,計測チューブの精油リザーバーから15 mmと30 mmに気体センサ1と2を設置した新たなシステムを開発した。本システムでラベンダーの揮発特性を60秒間計測し,センサ1の最大値,センサ1と2の傾き比,およびセンサ1の電圧残存率の3つの指標を抽出した。このうち,センサ1の最大値で,初期香りの到達量に相当するFirstを縦軸に,センサ1と2の傾き比で,遅れてくる香りの揮発特性に相当するDelayを横軸にした揮発特性First–Delayマップの創生を試みた。さらに,移流拡散シミュレーションにより,First–Delayマップと蒸気圧について,以下に示す結論が得られた。移流拡散速度が大きい,すなわち蒸気圧が高い成分が多い場合にはマップの上方に,低い成分が多い場合には下方の分布となる。また,初期香りの後に遅れてくる香りの蒸気圧の大きさや量に応じて,マップ横軸の傾き比が変化する。すなわち,遅れてくる香りの蒸気圧が低く,あるいは量が多いほど,マップ右方への分布となる。