アロマテラピー学雑誌
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原著論文
  • 富樫 盛典, 張 紅葉, 三宅 亮
    2025 年 26 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2025/02/07
    公開日: 2025/02/07
    ジャーナル フリー

    精油の香りの記憶を助ける観点から,揮発特性を蒸気圧と関連付けたマップ創生を本研究の目的としている。揮発特性計測には,計測チューブの精油リザーバーから15 mmと30 mmに気体センサ1と2を設置した新たなシステムを開発した。本システムでラベンダーの揮発特性を60秒間計測し,センサ1の最大値,センサ1と2の傾き比,およびセンサ1の電圧残存率の3つの指標を抽出した。このうち,センサ1の最大値で,初期香りの到達量に相当するFirstを縦軸に,センサ1と2の傾き比で,遅れてくる香りの揮発特性に相当するDelayを横軸にした揮発特性FirstDelayマップの創生を試みた。さらに,移流拡散シミュレーションにより,FirstDelayマップと蒸気圧について,以下に示す結論が得られた。移流拡散速度が大きい,すなわち蒸気圧が高い成分が多い場合にはマップの上方に,低い成分が多い場合には下方の分布となる。また,初期香りの後に遅れてくる香りの蒸気圧の大きさや量に応じて,マップ横軸の傾き比が変化する。すなわち,遅れてくる香りの蒸気圧が低く,あるいは量が多いほど,マップ右方への分布となる。

  • 富樫 盛典, 張 紅葉, 三宅 亮
    2025 年 26 巻 1 号 p. 10-23
    発行日: 2025/02/07
    公開日: 2025/02/07
    ジャーナル フリー

    アロマテラピー検定精油の香りテストの対象である17種類の精油の揮発特性の計測を試みた。対象精油は,ジュニパーベリー,フランキンセンス,ローズマリー,ユーカリ,レモン,スイートオレンジ,グレープフルーツ,ティートリー,スイートマジョラム,ローマンカモミール,ゼラニウム,ベルガモット,ラベンダー,レモングラス,クラリセージ,ペパーミント,およびイランイランである。計測に先立ち,精油の構成成分と蒸気圧を調査して一覧表にまとめた。精油の揮発特性の計測は,著者らの開発システムで3600秒間を各5回実施した。計測結果から,初期香りの到達量First,遅れてくる香りの揮発特性Delay,および香りの持続性Lastingの3つの指標を用いた2つのマップを創生し,以下の結論が得られた。FirstDelayマップでは,精油の蒸気圧の高低がマップの上下に対応する。また,遅れてくる香りの蒸気圧が低い,あるいは量が多いほど,マップの右方の分布となる。最終的に,FirstDelayFirst–Lastingの2つのマップにより,17種類の精油揮発特性を推測することができることを確認した。

  • 井上 美穂, 鈴木 善貴, 山田 輝乃, 井上 正久, 松香 芳三
    2025 年 26 巻 1 号 p. 24-30
    発行日: 2025/02/07
    公開日: 2025/02/07
    ジャーナル フリー

    睡眠時ブラキシズムは,歯の咬耗や破折,顎関節症や緊張性頭痛の発症など,歯科疾患の要因となっている。一方,アロマテラピーはリラックス作用を有し,ストレス軽減や鎮静作用などが期待できる。本研究では精油の嗅覚刺激による睡眠中の咬筋活動(律動性咀嚼筋活動:RMMA)の変化を調査することにより,睡眠時ブラキシズムに対する効果を検討することを目的とした。方法:被験者49名に対して,ベルガモット(Citrus bergamia)とマージョラム(Organum majorana)の精油を用い,終夜の咬筋活動の測定を行った。測定開始2日間は非介入,3日目は1種類の精油での睡眠,4日目は非介入,5日目は別の精油,最終日は非介入で測定し,2日目の非介入と各精油による比較を行った。結果:RMMAはマージョラムにおいて非介入よりも有意に減少した。重度ブラキシズム群では,軽度および非ブラキシズム群に比べ,どちらの精油にも効果があったものが多かった。結論:マージョラムは睡眠時ブラキシズムを軽減させた。重度ブラキシズム群ではマージョラム,ベルガモットともに睡眠時ブラキシズムが減少した。

研究ノート
  • 澤井 久子, 水上 勝義
    2025 年 26 巻 1 号 p. 31-41
    発行日: 2025/02/07
    公開日: 2025/02/07
    ジャーナル フリー

    精油の香りが,テレワーク就業者の気分,睡眠の質,認知機能,仕事のパフォーマンスに及ぼす影響を検討するため3つの実験を実施した。実験1:精油を4週間使用した前後の,心理,睡眠,認知機能,仕事パフォーマンスへの変化を,STAI,POMS®2,アテネ不眠尺度,オンライン認知検査,SPQ東大1項目版により検討した。実験2:精油を使用する直前と10分後の気分変化について,二次元気分尺度により検討した。実験3:3日間の精油使用における睡眠構造および主観的熟睡感の変化について,Fitbit Charge3および起床後熟睡感により検討した。対象者は25~49歳の男女30名であった。精油は,日中はローズマリー・シネオールまたはオレンジスイート,夜間は真正ラベンダーまたはベルガモットから,実施時ごとの嗜好に基づき選択して使用し,対照として精製水を用いた。精油の香りによる芳香浴を4週間実施した結果,SPQ東大1項目版によるプレゼンティーイズムの値は低下し,精製水における変化量と有意差が認められた(p<0.05)。また,芳香浴開始10分後に,二次元気分尺度(TDMS-ST)の活性度,安定度,快適度の値がいずれも有意に上昇した(p<0.05)。本研究の結果,精油の香りがテレワーク就業者の仕事パフォーマンスや気分に有用な可能性が示唆された。

  • 沢村 正義, 芦澤 穂波, 浅野 公人, 長野 桃太, 北岡 雄一
    2025 年 26 巻 1 号 p. 42-49
    発行日: 2025/02/07
    公開日: 2025/02/07
    ジャーナル フリー

    市販のベルガモット(Citrus bergamia Risso)精油に含まれるLinaloolとLinalyl acetateのエナンチオマー分析を行うことによって,ベルガモット精油の純度の検証を行った。市販試料としては,34種類が果皮圧搾油,1種類が果皮水蒸気蒸留油であった。また,ベルガモット果実から実験室レベルの圧搾油およびヘキサン抽出油を調製し試料とした。これらに加えて,長期室温保蔵した3種類の圧搾油およびラセミ体のLinalool標準試薬についても分析した。分析は選択的イオンモニタリング(SIM)モードを使ったガスクロマトグラフィー-質量分析計によりキラルカラムを用いて行った。設定質量はLinalool, Linalyl acetateに共通して,m/z 71.0, 93.0, 80.0, 121.0とした。(S)-(+)-Linaloolに対する(R)-(-)-Linaloolのエナンチオマー割合は,(R)-(-)-Linaloolが多くの市販の圧搾油,蒸留油,そして実験室レベルの調製試料および長期室温保蔵試料においても98.0%ee以上と圧倒的に高いことが明らかとなった。このことはエナンチオマー割合が種々の因子によって影響されず変化しないことを示唆している。結論として,(R)-(-)-Linaloolのエナンチオマー割合から判断して,市販ベルガモット精油にはエナンチオマー純度の高い精油と判断されたものが29種類,残りの9種類の精油は純正な精油とは判断できなかった。

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