抄録
本研究では,排水基準を定める省令の改正(平成18年環境省令第33号)が,愛知県内の河川水中における全亜鉛(Zn)濃度に与えた影響について検討した.愛知県内の69地点における1991~2022年度の公共用水域調査データを用いて,時間に対するZnの傾きについて窓を移動させながら求めるローリング回帰によりZnの減少傾向が概ね収まった時期を推定し,対応のあるt検定によりその前後での濃度変化を確認した.ローリング回帰の結果,2009年4月を中心とする窓においてZnの有意な減少地点数と増加地点数が概ね等しくなったことから,2009年4月を基準年月とし,前後各2年間におけるZn濃度の比較を行ったところ,69地点中22地点で有意な濃度減少が認められ,とりわけ,木曽川,庄内川,境川,矢作川,豊川の本川下流側で有意な濃度減少が確認された.また,2007年4月~2009年3月の段階で0.03 mgL⁻¹を超えていた12地点のうち7地点で有意な濃度減少が認められた.この結果は,省令改正による排水基準強化がZnの減少に一定の効果をもたらした可能性を示唆している.