抄録
溶融塩炉は燃料塩が核分裂反応を伴いながら炉内を循環する液体燃料炉である為,原子炉内は燃料塩の流動,核分裂,熱移動が相互に干渉する複雑な場となっている。本研究では流動,核反応,熱移動の相互干渉を考慮した解析モデルを用い,燃料塩流量が変化した際の小型溶融塩炉の炉心特性を明らかにし,流量操作による炉制御を検討した。
その結果,燃料塩流量と炉熱出力との間には一次の相関が認められ,燃料塩流量の増加とともに炉熱出力は上昇した。また,炉熱出力が新しい定常出力値273MWに変化する際の整定時間(新しい定常出力値の±5%以内に落ち着くまでの時間)は約100秒であり,炉制御を行う上で十分な安定度,速応性を有していることを確認した。
本研究の解析より,燃料塩流量を変化させた際の小型溶融塩炉の炉心特性が明らかになった。またBWRと同じように,燃料塩流量の操作により炉出力制御の可能性のある事が示された。