抄録
キュリー点方式の電磁石を利用した自己作動型炉停止機構(SASS)は、実用化段階の高速増殖炉の受動的停止機構として、昭和61年度から研究開発を進めている。本概念は、炉心冷却材の温度上昇に速やかに応答し、投入される負の反応度も大きく、かつ、炉内でのリセット性やテスタビリティがあり、制御棒切離しの不確かさが少ないという特長がある。各種の要素試験(保持力特性試験、応答特性試験)により実用炉での要求条件を満足するSASS設計の確立と、システム試験(Na中耐熱・耐熱過渡試験)による炉停止システムとしての信頼性検証が行われた。その結果、SASSの制御棒吸着保持性能やATWS事象を模擬した熱過渡時の温度応答特性が十分な性能であることを確認した。また実機と同等の使用環境下において約30ヶ月の耐久試験を行い、SASS性能が安定していることを確認した。以上から十分な性能と信頼性を有するSASSの設計手法の妥当性を検証するとともに、実用化段階のFBRへ導入できる見通しを得た。