抄録
環境中に広く存在する石英粒子などの絶縁性白色鉱物は、電離放射線との相互作用の結果様々な発光現象 (ルミネッセンス) を示すことが知られており、加熱に伴う発光である熱ルミネッセンス (thermoluminescence;TL) 測定法が、第四紀の年代測定の手法として認知されつつある。特に当研究室で世界に先駆けて発見した赤色熱ルミネッセンス (RTL) は蓄積線量評価に対して高い信頼性を有していることを確認でき、これまで報告してきた。これまでルミネッセンス研究では、粒子内部で生じたルミネッセンスも表面部分で生じたものと同一であると仮定されてきた。しかし単一粒子 (シングルグレイン) 測定から、石英内部で発生したルミネッセンスは粒子表面を通過する際に散乱や吸収で減光していることが判明してきた。本実験では、この影響がどのようなメカニズムで生じるのかをルミネッセンス測定法を用いて評価した。