抄録
放射性ヨウ素廃棄物(129I)の地層処分環境の一つとして想定される硫化鉄共存還元雰囲気においてヨウ化銀溶解実験を行い、その基礎化学的性質を評価した。(Ar+5%H2)ガス雰囲気中で2種類の硫化鉄粉末(FeS2とFeS)をそれぞれ水中に浸漬させて見かけの溶解平衡に到達させ、その後ヨウ化銀粉末を投入して溶液中へのヨウ素浸出量を50日程度まで測定した。
ヨウ化銀は安定な化合物で水への溶解度が10-8Mと難溶性を示すが、硫黄(S2-)存在下では硫化銀(Ag2S)の生成によりヨウ化銀の溶解が速やかに進行する。今回の実験で硫化鉄を共存させた系では、Ag2S生成で消費された硫黄は硫化鉄から供給され続け、ヨウ素の速い浸出が継続した。一方でFeS平衡下ではヨウ素の浸出が比較的ゆるやかに進行した事に比べ、FeS2平衡下では溶解が速やかに進行した事から、ヨウ化銀溶解は溶液pHや硫化鉄の化学的性質および試料表面積によって複雑な挙動を示すと考えられる。