抄録
従来、即発中性子は核分裂片が十分にクーロン加速した後に放出されると考えられてきたが、加速途中における中性子放出の可能性があるのではないかとの議論もあった。本研究では、マルチモード核分裂モデルから得られた初期核分裂片の質量、電荷、荷電中心間距離等を初期状態として、励起分裂片からの中性子放出をモンテカルロ法で解析した。その結果、その確率が無視できないことが分かった。これを考慮して即発中性子スペクトルを計算すると、低エネルギー成分が増強され、核分裂片重心系における非等方性とあわせ考えると、従来から指摘されていた0.5MeV以下における実験値と理論値の不一致を解消できることを示した。