抄録
TlBrは原子番号が高く,高エネルギーのX線やガンマ線の検出器材料として特に核医学への応用が期待されており,TlBrを用いた半導体PET装置の開発が検討されている.しかしながら,TlBr検出器は結晶の移動度が小さくPET装置に必要とされる時間分解能が得られていないという問題がある.そこで,TlBr検出器の時間分解能向上に向けて,キャリアのドリフト速度の印加電圧・温度依存性を調べ,検出器の時間分解能向上の可能性について評価を行った.1mm厚のプレーナー型TlBr検出器にバイアス電圧を100-300 Vまで段階的に印加し,電子のドリフト速度の測定を行った.その結果,電子のドリフト速度は印加電圧に比例して増加する傾向を示し,今回印加した電界では電子のドリフト速度はまだ飽和に達していないことがわかった.発表ではドリフト速度の温度依存性,キャリア移動度の評価結果についても議論を行う予定である.