糖尿病学の進歩プログラム・講演要旨
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セッションID: DL-6
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レクチャー:糖尿病の成因と病態の解明に関する研究の進歩(2)
レプチン
*小川 佳宏
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キーワード: レプチン
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抄録
肥満遺伝子産物レプチンは、体表的なアディポサイトカインの一つであり、主に視床下部を介して強力に摂食量の減少とエネルギー代謝の亢進をもたらし、肥満と体重増加を制御すると考えられている。これ以外にもレプチンは交感神経活動亢進作用や神経内分泌調節作用等の多彩な生物作用を有することが知られている。我々は、レプチンの持続作用を明らかにするために、レプチン過剰発現トランスジェニックマウスを世界に先駆けて作製し、このマウスでは脂肪組織がほとんど消失する程の著しい痩せとともに糖代謝とインスリン感受性の亢進が認められることを報告してきた。このマウスを用いて、抗糖尿病薬としてのレプチンの可能性を検討し、1)インスリン依存性糖尿病では、少量のインスリンとレプチンの併用療法が、2)インスリン非依存性糖尿病では肥満を合併しない場合にはレプチン単独投与が、肥満を合併する場合にはカロリー制限とレプチンの併用療法が、3)脂肪萎縮性糖尿病ではレプチン単独投与が、それぞれ有効であることを証明してきた。このうち脂肪萎縮性糖尿病は、レプチン補償療法の治療効果が最も期待できる病型の糖尿病であり、京都大学内分泌・代謝内科(中尾一和教授)においてレプチン補償療法が施行されており、極めて良好な治療成績が報告されている。大部分の肥満者では、体脂肪量に比例して血中レプチン濃度が上昇するにもかかわらず肥満の改善が認められないため、「レプチン抵抗性」の状態であると考えられている。一方、肥満症では高レプチン血症によりもたらされるレプチンの過剰作用がメタボリックシンドロームの発症に関与する可能性がある。例えば、肥満に合併する高血圧の少なくとも一部は持続的な高レプチン血症によることが証明されている。更に、末梢組織に直接作用することにより、レプチンは血管新生促進、血小板凝集促進等をもたらすことが知られている。実験的にも、レプチンは虚血性網膜血管新生モデルにおいて網膜血管新生を促進することが証明されており、糖尿病性網膜症を促進する可能性がある。肥満症患者ではレプチンの末梢作用に関しては感受性であり、肥満や糖尿病に合併する血管障害や動脈硬化症の発症にレプチンが関与する可能性がある。本講演では、糖尿病あるいは糖尿病合併症におけるレプチンの治療薬としての可能性と病態生理的意義について概説する。
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© 2005 日本糖尿病学会
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