糖尿病学の進歩プログラム・講演要旨
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セッションID: DS-3-2
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シンポジウム:インスリンシグナルと動脈硬化症の関連性
インスリンと血管内皮細胞:インスリンの血管壁作用
*西尾 善彦
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抄録
インスリンは糖脂質代謝の主要な調節因子であるだけでなく、血管内皮細胞に作用して、内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)をリン酸化することにより活性化し、血管内皮よりのNO産生を増加させて内皮依存性の血管弛緩反応を亢進させる。事実、インスリンは生体において血管弛緩作用を有し、血流増加作用を示すことが報告されている。また、インスリン抵抗性を示す肥満者では、インスリンによる内皮依存性の血管弛緩反応やアセチルコリンで刺激した際の内皮依存性の血管弛緩反応が低下していることが明らかにされている。一方、インスリン抵抗性状態に伴って生じてくる高インスリン血症は高血圧や動脈硬化といった血管機能と関連した病態を誘導することが多数の疫学研究から明らかにされており、高インスリン血症状態でのインスリンの血管壁への作用が注目されている。しかしながら、インスリンの血管壁への直接作用がもつ生理的あるいは病理学的意義に関しては不明な点が多い。インスリンによる血流増加作用が組織の糖取り込みにも関与するか否か、あるいはインスリンが直接動脈硬化を誘導するか否かなど議論を呼んでいる点も多い。動脈硬化とインスリン作用に関しては、全身のインスリン抵抗性状態を反映して、血管壁にもインスリン抵抗性がみられ、インスリン作用が低下することで血管障害を引き起こすと考える説と高インスリン血症に伴うインスリンの血管壁への過剰な作用が平滑筋細胞の増殖を促し動脈硬化を促進するという仮説がある。これまでの研究より、インスリンの血管壁作用が抗動脈硬化作用と動脈硬化促進作用の2面性を持つことが明かにされているが、臨床的にみられる高インスリン血症がどのように動脈硬化を進行させるのかに関してはまだまだ不明なままといえる。今回の発表では、現在までに明かにされているインスリンの血管壁に対する作用を我々のデータを含めて提示して、インスリンによる血管壁への作用の病理学的意義について述べる。
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© 2005 日本糖尿病学会
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