抄録
1.糖尿病の疾病モデル 糖尿病は、がんや虚血性心疾患など通常病院で提供される医療とは異なった特徴を持っている。第一に疾病を治癒することは不可能であるが、「管理可能」で極めて有効な治療法を有すること。第二に毎日「継続して治療」が必要であること。第三に次々に他の「重篤な合併症」を引き起こしうること。第四に、従って状態によっては必要とされる「診療内容が大きく変化」すること。第五に診療内容に応じて「様々な専門職」が必要であること。第六にこれらの診療行為をコーディネートし、推進していくのはほかならぬ「患者自身」であること。 「継続診療」、「機能分担」、「連携医療」は、人口の高齢化と共に多くの疾病に必要になってくるので、糖尿病診療こそ日本の診療システムを改革するためのパイオニアに他ならない。2.糖尿病の医療経済 糖尿病は、疫学的観点からも経済学的観点から見ても、今日の日本にとって最も重要な疾患の一つである。「患者数」は、2002年の全国調査によると、可能性のある人を含めて1620万人に上り、高血圧に次いで多数の慢性疾患であり、5年間に250万人の増加を見ている。 「自然史」から見ると、視神経、腎・血管疾患等を併発し、脳卒中や虚血性心疾患の発症の大きな危険因子である。近年、男性の肥満や運動不足が増加し、予防が重要となってきているが、発症後も自然史に対応したケアが必要で、生涯を通したし疾病管理が重要である。 しかし、治療を受けている「患者」は少なく、2002年患者調査によると380万人(受診間隔31日以上の患者を含む)に過ぎず、全国調査でも糖尿病が強く疑われる740万人の約50%に過ぎない。 直接の「医療費」だけで2002年には1.1兆円を使っており、8大疾患の1兆円前後グループの中では最も増加が著しい。更に、現在非治療中の糖尿病患者を全て管理下に置くとすれば、2~4倍、2~3兆円の医療費が更に必要となる。「人材」もまた、現在の2~4倍が必要となる。一人当たり管理費も高血圧に比して約2倍近くを要し、より費用対効果の高い管理技術の開発と定着が望まれる。