抄録
740万人と推定される糖尿病患者が標準的な医療を受けることができる体制を整備するためには、糖尿病専門医の在籍する基幹病院、糖尿病専門医が運営する診療所、糖尿病は専門外であるかかりつけ医の間での連携が必要であることは明らかである。これまでにも多くの地域で糖尿病診療のネットワーク作りへの取り組みが行われてきている。現実には依然として大規模病院への患者の集中傾向がみられるが、200床を超える病院での外来診療報酬には包括化が拡大しており、入院診療と外来診療の機能分化をはかる動きが進められている。NTT東日本関東病院糖尿病・内分泌内科では、医療連携の充実による地域における糖尿病管理の向上を目標として、近隣医師会との連携を強化し、病院から診療所への逆紹介の推進に取り組んでいる。ネットワークの構築上最も重要なポイントを病院医師と診療所医師の間での信頼関係の樹立と考え、逆紹介受け入れ診療所医師と当科医師とによる症例検討会、診療ガイドラインづくり、紹介・逆紹介フォーマットの作成を行っている。当科の電子カルテ端末には各地域別の診療所の情報が収められており、逆紹介時には診療所の地図や医師のプロフィールがハードコピーで患者に手渡される。また診療所医師からの入院による糖尿病教育に関する日数短縮の要望にこたえ、従来の7日の糖尿病教育入院パスを3日に短縮した。地元品川区医師会会員との間では、DM-2(Diabetes Mellitus, Disease Management)という専用の患者紹介・フォローアップシステムを構築し、かかりつけ医による医療水準向上への取り組みを行っている。糖尿病診療においては、生活環境が発症、治療効果、予後に大きく関与する。かかりつけ医における糖尿病の医療水準が向上すれば、地域における糖尿病管理体制の強化につながり、基幹病院の糖尿病専門医との密接な連携によって糖尿病治療のより有効な戦略も見出されてくることが期待される。地域かかりつけ医による糖尿病患者の外来管理が順調に推移することが、病院の糖尿病専門医がその期待される業務に一層の時間を費やすことを可能にすると思われる。