霊長類研究 Supplement
第76回日本人類学会大会・第38回日本霊長類学会大会連合大会
会議情報

口頭発表
野生チンパンジーの排泄行動の発達過程
松本 卓也
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 46-

詳細
抄録

生物学用語における排泄(排出)とは、物質代謝に伴って生じた不要物を体外もしくは代謝系外に排除する現象を指す。本発表では、その中でも特に排便と排尿を合わせて排泄と表記する。現代日本社会のヒトは、特定の場所(便所、携帯便器など)で排泄することが求められる。そして、赤ちゃんがおしめを着けたままではなく特定の場所で排泄するようになる過程はトイレトレーニングと呼ばれ、発達上の重要性が指摘されている。

 一方、ヒト以外の霊長類の排泄は、時と場所にさほど気を遣わない、あるいはしたい時にする、野糞である、としばしば言及される。しかし、排泄物がヒト同様に忌避の対象となる霊長類種においては、排泄物が自分あるいは他個体に付着しないための、ゆるやかな規則が存在するかもしれない。上記の予想に基づいて、発表者は野生チンパンジーの排泄行動を観察・記録した。

 観察対象はタンザニア連合共和国・マハレ山塊国立公園に生息するチンパンジーである。発表者は2019年9月から2020年3月の期間に断続的に調査を行い、チンパンジーが排泄した際の他個体とのやりとり、前後の行動、および場所(倒木の上、岩の上など)を記録した。チンパンジーは地上と樹上の両方を利用する半樹上性の生物である。そのため、排泄個体と他個体の空間的配置も併せて記録した。本発表では、これらの観察結果の分析を基に、チンパンジーの排泄の特徴とその発達過程を描き出し、ヒトの排泄との相違について議論する。

著者関連情報
© 2022 日本霊長類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top