糖尿病学の進歩プログラム・講演要旨
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セッションID: DS-2-5
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シンポジウム:糖尿病血管合併症の分子機構と新たな治療法の開発を目指して
糖尿病性神経障害-1: 神経伝導検査からみた糖尿病神経の病態
*馬場 正之
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抄録
神経伝導検査(NCS)は末梢神経障害診断の現場で最も重視される検査である。ヒトのみならず各種末梢神経障害動物モデルにおいても、病理学的変化との厳密な比較研究がなされているからである。これまで蓄積されたデータをもとに、NCS所見からみたヒト糖尿病性神経障害(DPN)の病態と症候学的関連について考えてみる。   1) 無症候性DPN(神経症状なしだがアキレス腱反射が消失した糖尿病患者)の伝導異常: 最も異常率が高いのは脛骨神経F波潜時で、正常上限から10~20%延長が67%の患者でみられる。また、上肢神経でも1/3を越える正常域離脱者がみつかる。運動電位(CMAP)振幅はほぼ全員が正常。複合神経電位(CSAP)は40%の患者で2~5μV(正常下限値5μV)にあったが、完全消失者はいなかった。F波最短潜時は最大径有髄線維伝導の結果であり、その潜時延長は最大径線維消失を示唆する。膝足首間および肘手首間MCV、遠位潜時など速度系指標の異常も同意義だが、F波潜時は末梢神経のいかなる場所の病変をも反映し、しかも長距離伝導故に再現性も良い。ただ、速度系指標の異常はDPN末梢神経病変の本質的変化である軸索密度低下度を直接反映するものではない点に注意を要する。 2) 感覚異常の自覚はないが足に感覚鈍麻が検出される群の伝導異常: 腓腹神経CSAP消失者が含まれてくると同時に下肢CMAP低下者が少なからず見つかる。CSAP振幅低下はニューロパチーの本態である有髄神経数減少の進行を示す。特にCSAP記録不能は有髄神経密度の高度低下所見であるから、いかに症状が軽微でも憂慮すべき段階と考えるべきである。 3) 腱反射が低下・消失し、足部感覚鈍麻が明らかな顕性ニューロパチー群の伝導異常: 腓腹神経電位消失者20%を含むCSAP振幅低下者が70%に達し、脛骨CMAP低下者・消失も20%に及ぶ。緩徐進行性神経疾患におけるM波振幅低下や消失は運動神経線維変性が脱神経筋線維の再支配を上回った事態、つまり治癒・再生機転の崩壊を示す重要な指標である。したがって、末梢神経障害としては最終段階に入ったと理解される。この時期に混入する中潜時電位A波は、運動神経の未熟再生神経線維に由来する異常所見である。 これらの知見から、薬物効果検定ではどのような指標を用いるべきかについても言及する。
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© 2005 日本糖尿病学会
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