抄録
糖尿病における心血管疾患として虚血性心臓病(狭心症、心筋梗塞)が最も重要であるから糖尿病専門医にとってもその検査法を熟知しておくことが望まれる。また心血管死の独立した危険因子である心肥大の有無を常に念頭に置く必要がある。糖尿病における心肥大は冠動脈硬化による心筋傷害からのみでなく、合併する高血圧症や腎不全にも起因して生ずるからである。さらにアテローム血栓性脳梗塞の直接原因となる頚動脈や大動脈弓部の血管病変の検査法も知っておきたい。 生理検査の基本は心電図と心臓超音波検査である。心電図には安静12誘導心電図の他に、運動負荷心電図とホルター心電図がある。超音波検査は、レポートも付いてくるし形態や流速がひと目で分かり直感的で理解し易い。一方、古典的な検査法である心電図の解釈にはある程度の知識が必要であり、自動解析の結果のみに頼ると重要な情報を失うことも多い。本講演では、心電図については実戦で役立つ判読のポイントを簡潔に述べる。心臓(血管)超音波検査ではルーチン検査に加え、最近臨床応用された方法も実例を提示して解説する。 心電図:肥大、心筋虚血・梗塞、不整脈等を診断する。肥大はQRS波のみでなくST部、T波、U波にも目を向けると診断精度が向上する。心内膜下虚血では虚血型ST低下(水平型、下行傾斜型)が、貫壁性虚血ではST上昇が見られる。ST上昇部位は虚血部位との対応がみられるが、ST低下はV5誘導を中心として出現し、虚血部位の同定は困難である。一方、陰性U波、陰性T波は虚血部位の診断に有用である。運動負荷心電図は狭心症の診断目的で通常トレッドミルにて行われる。虚血反応が陰性でも運動障害等により目標心拍数に到達していない場合は慎重に評価する必要がある。ホルター心電図では合併する致死性心室性不整脈の診断に有用で、心拍変動解析により自律神経障害の診断の参考となる。心臓血管超音波:心拡大、肥大等の直接診断が可能である。心筋虚血時には収縮末期の壁厚増加の程度が減少する。慢性の心筋梗塞では壁の菲薄化や瘢痕形成がみられる。左室駆出率は収縮能の指標となる。頚動脈の観察は体表から可能であるが、大動脈弓部の血管病変は経食道検査が不可欠である。 これらの検査は糖尿病専門医が必ずしも直接行う必要はなく、得られた結果を総合的に判定する能力を持つことが肝要と思われる。