糖尿病学の進歩プログラム・講演要旨
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セッションID: AL-7
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レクチャー:糖尿病専門医に必要な心血管疾患の診断に関する検査
ナトリウム利尿ペプチドの臨床応用
*吉村 道博
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抄録
 1984年に心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)がMatsuo・Kangawaによって発見されてから20年が経過した。BNPとCNPも同グループから相次いで発見され、現在、この分野の研究は確実に発展し続けている。 ‘治療薬としてのANP’は世界中で日本が最初に着手しているが、急性心不全治療のおける同薬剤の位置付けは今や確固たるものとなった。一方、BNPは、心不全の診断の世界を根底から変えつつあると言っても過言ではない。それは、単に「BNPが臨床的な心不全のマーカーである」と言うことのみならず、「そもそも不全心から何故ホルモンが分泌されるのか」、そして「心臓は単にポンプではなかったのか」といった心臓および心不全の根本的な議論を呼び起こしているからである。 心不全の病態には血行動態の悪化のみでは説明が付かなかった現象が山積していたが、BNPにてその多くが説明できるようになった。一般的には、心機能の低下がそのまま心不全の病態(状態)と勘違いされがちであるが、実際には同じように心機能が低下していても日常生活を送れる方もいれば、CCUにて生命の危機に瀕している方もおられる。つまり、心不全の病態で重要な点は、見かけの心機能低下だけではなく、心機能低下を代償する機構の機能不全(過剰の働き)にある。特に神経体液性因子の関与は大きいと言える。心機能低下に伴う血圧の低下を防ぐ為にはRAA系の活性化は極めて重要な機構であるが、心不全ではその過剰の活性化が逆に問題となる。RAA系の過剰の活性化が心不全の悪循環を生じさせることは周知の事実であろう。それに孤軍奮闘するのがANP, BNPであり、その種々の作用でRAA系の行き過ぎを抑制しようとする。NPがなければ心不全が進むことはANP, BNPのKOマウスでも証明されている。つまり、NPは心不全の病態そのものの理解につながることを強調したい。 BNPは心不全の重要マーカーであり、その臨床応用は大変な勢いで進んでいる。BNPは心不全の重症度判定や薬効評価に有用であろう。また、検診などの心不全にスクリーニングや予後判定にも使える。しかしながら今後検討しなければならない問題は山積している。心不全の基礎疾患でBNPがどのように変化するのか未だ検討不足であり、年齢とBNPの関係や心不全としてのカットオフ値などの設定についても確固たる指針はない。 ANP, BNPは日本で発見され、日本で発展してきた類稀なホルモンである。今後ともこの分野の研究は日本が世界をリードすべきであり、多くの臨床研究者が参入されることが望まれる。糖尿病の分野においても然りであり、糖尿病とナトリウム利尿ペプチドの研究およびその臨床応用はこれからの大きな課題である。
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© 2005 日本糖尿病学会
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