抄録
糖尿病と関連した脳神経疾患としては、大脳症候群としての動脈硬化症に基づく脳梗塞や糖尿病性昏睡、低血糖脳症が有名であるが、それ以外にも糖尿病性腎症による人工透析患者に起こる透析脳症や、脊髄症候群としての糖尿病性ミエロパチー(脊髄症)や脊髄梗塞(前脊髄動脈症候群)、筋障害としての糖尿病性筋萎縮(diabetic amyotrophy)、末梢神経障害としての脳神経麻痺やポリニューロパチーなどが知られている。3大成人病の一つと言われる脳卒中は、今日では脳梗塞が多数を占めている。脳梗塞は糖尿病や高血圧、高脂血症といったいわゆる生活習慣病や心疾患などの基礎疾患を背景として発生し、有病率は日本社会の高齢化に伴って年々増加の一途を辿っている。多くの大規模スタディーによるEBMによれば、糖尿病患者の脳卒中発症リスクは約2~4倍とされている。脳梗塞急性期の画像検査としては、CTスキャンやMRIが用いられている。CTスキャンでは所謂early CT signsとして、大脳基底核や島皮質の不明瞭化、脳実質の淡低吸収域、脳溝不明瞭化、hyperdense MCA signなどが初期診断として有用とされている。一方MRIでは、脳血流画像としてのperfusion imageと脳代謝障害画像としてのdiffusion imageとの差(所謂perfusion-diffusion mismatch)が、病態把握ならびに血行再建術治療適応決定に重要とされている。近年の糖尿病患者の増大により、脊髄の梗塞(前脊髄動脈症候群)や糖尿病性ミエロパチー(脊髄症)、糖尿病性筋萎縮(diabetic amyotrophy)患者数も増えている。また糖尿病性ポリニューロパチーにおいては、特に四肢末端の末梢神経が障害されやすく所謂手袋靴下型(glove-stoking type)の感覚運動障害を来たすことが多い。さらに糖尿病治療に伴って末梢神経障害が発生したり、糖尿病を来たすことが知られているミトコンドリア脳筋症でも脳卒中様症状を来たすこともあり注意を要するところでもある。本会では以上の様な疾患の一部について脳画像を中心に解説をする。