抄録
糖尿病の合併症の一つである心血管疾患の発症には、多くの因子が関わっているが、血清脂質異常も直接、間接に関わっている。それを理解することは、より効果のある指導あるいは的を得た投薬につながり信頼される医療を可能とする。本項では、糖尿病時のリポ蛋白代謝異常、また、一般的に測定されている脂質検査項目について、動脈硬化との関わりを中心に概説する。1.糖尿病時のリポ蛋白代謝異常糖尿病状態はいずれの高リポ蛋白血症をも増悪させる方向に働く。そして、その個人の持っている潜在的リポ蛋白異常を顕性させる。それは、一つには、脂質の吸収が亢進し、高血糖下では肝臓でリポ蛋白合成が亢進していること、くわえて中性脂肪分解酵素であるリポ蛋白リパーゼの発現はインスリン作用下にあることから低下し、異化障害が起こるためと説明される。2.糖尿病時の各脂質値の意味1)総コレステロールとLDL-コレステロール フリーとエステル型コレステロールの総和を示している。一般に、主に高LDL血症を反映しているが、高VLDL血症でも高度では高値となる。一般に血糖コントロールをよくすると改善するので、通常直ちに、高コレステロール剤を用いず、まず血糖の改善をはかる。HBA1cが1%低下すると、平均約20mg/dl―30mg/dl低下する。 LDLコレステロールは直接法で測定することが望ましい。2)中性脂肪 高中性脂肪血症は、一般にVLDL高値を反映する。と同時にレムナントの存在、加えて小粒子LDLの存在も意味する。小粒子LDLは易酸化性であることから間接的に動脈硬化促進要因となる。糖尿病時にはしばしば高度な高中性脂肪血症をきたすが、肥満、血糖コントロールが悪いことが多い。糖尿病では、レムナントの出現は、中性脂肪100mg/dl以上で見られる。ちなみに健常人では、150mg/dl以上であった。血糖コントロールでかなり改善する。3)HDL-コレステロール 一般に糖尿病では低値をとる。インスリン感受性を反映するとも言われている。糖尿病の改善で高値となる。4)リポ蛋白電気泳動ポリアクリルアミドデスク電気泳動法で血中リポ蛋白を分析すると、リポ蛋白粒子サイズの順に分離される。特に、ミドバンド(レムナント、IDLに相当)の存在、小粒子LDLの存在を容易に見ることが出来る。5)その他レムナント様リポ蛋白_-_コレステロール、Lp(a)、アポ蛋白酸化LDLなども上げられるが、これらの意味についても言及したい。