糖尿病学の進歩プログラム・講演要旨
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セッションID: AL-11
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レクチャー:糖尿病専門医に必要な心血管疾患の診断に関する検査
糖尿病における冠動脈病変の評価
*山岸 正和前原 晶子
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抄録
耐糖能異常を主徴とする糖尿病は、生体における微小血管、大血管系を同時に障害する背景因子として重要である。ことに、心臓、大血管系における循環障害は致死的でない場合においても、高度な機能障害の残存など、社会的にもハンディキャップを背負うことになるため、本症における血管合併症の的確な診断が肝要である。糖尿病症例での冠動脈造影所見の特徴は、1.狭窄度が高度であり、完全閉塞率が高い。2.瀰漫性かつ石灰化を伴うことが多い。3.末梢冠動脈での病変が多い、などである。しかし、血管造影では血管内腔の狭窄重症度の評価は可能であるが、血管壁での病変進展の評価が困難である。実際、血管造影上正常と判定される部位を血管内超音波(intravascular ultrasound:IVUS)で観察すると殆どの場合(90%以上)内膜増殖や粥腫など動脈硬化所見を認める。実際、患者背景との関連を多変量解析にて検討すると、粥腫量に独立して関係しているものは、糖尿病、性差、年齢、血清脂質である。IVUSでの粥腫形態を非糖尿病、1型、2型糖尿病の3群にわけて検討すると、糖尿病群では対照部位での粥腫がより大きく、瀰漫性の動脈硬化病変の発症を示唆す。興味あることに、罹病期間が10年以上、または1型糖尿病の如く病歴の長い症例においては、狭窄病変部、対照部ともに血管総面積が病歴の短い症例に比べて小さく、粥腫面積も小さいことが示された。これらは冠動脈が全長にわたり狭小化している現象と考えられ、たとえ粥腫量が少なくても血管内腔の狭窄率は高度になりえると推察される。糖尿病症例における血管形成術に際しては、かかる病変の特徴に留意する必要がある。実際、糖尿病合併症例における血管形成術は再狭窄発生率が高く、特に多枝病変を有する患者の予後は冠動脈バイパス術のほうが良好であり、治療部位の再狭窄の問題のみならず、長期の心臓死も冠動脈バイパス術群で有意に低いという。血管形成術後の再狭窄阻止のため、免疫抑制剤や抗がん剤系の薬剤をあらかじめステントに塗布し、徐々に溶出させる薬剤溶出性ステントが臨床応用されるようになったが、糖尿病における血管径が小さく病変の長い対象病変への効果が期待される。この場合においても、血管造影のみならず、IVUSを用いての病変分布の評価が効果的である。
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© 2005 日本糖尿病学会
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