抄録
高血圧の薬物療法において、最も優先することは十分な降圧である。高血圧性合併症としての心血管疾患の発症頻度は血圧値にほぼ比例することから、EBMに基づいて決定された降圧目標以下に、確実な降圧を計る。その際には6種の主要降圧薬の中から使用禁忌に抵触しない薬剤であれば、種類のいかんに関わらず使用が可能である。耐糖能異常合併高血圧では、当教室の端野・壮瞥町疫学研究の成績でも130/80 mmHg 以上で心血管死亡のリスクが有意に高くなることから、とりわけ十分な降圧が必要である。単剤の治療で十分な降圧が得られない場合には併用療法となるが、薬剤間での相乗効果が期待できる組み合わせを考慮して、第二次、第三次薬を追加する。 高血圧性の臓器合併症を既に有する例に対しては、降圧目標への確実な降圧は当然であるが、加えてその臓器機能保護作用を有する薬剤の使用を優先し、少なくとも臓器機能に悪影響を及ぼさない薬剤の使用を考慮する。各臓器障害に対応して各々に臓器保護作用を示す薬剤の成績が報告されているので、これを考慮して至適薬剤を決定する。糖尿病性腎症に対する腎保護効果はレニン・アンジオテンシン系抑制薬が豊富なエビデンスを有する。この臓器保護効果についても薬剤併用の相乗効果が証明されているものがあるので、これを優先する。 高血圧患者は動脈硬化の他の危険因子を有することが多く、たとえば糖尿病の合併は正常血圧者に比較して2_-_3倍多く、また、新規の糖尿病発症も2_-_3倍多い。肥満、脂質代謝異状も併せて、各々のリスクは軽症であってもこれら危険因子が重積すると、心血管疾患の高リスク群を形成することから、メタボリック症候群として注意が喚起されている。この背景にはインスリン抵抗性/代償性高インスリン血症があることから、このインスリン抵抗性を改善する作用を有する降圧薬を優先して使用し、少なくともインスリン抵抗性を増悪させる薬剤の選択は避ける。このことは糖尿病の新規発症抑制効果にも連動すると考えられている。 シンポジウムでは、心血管疾患の進展阻止のための十分な降圧と、これに臓器合併症や他の動脈硬化の危険因子の有無を勘案した薬剤の選択、好ましい併用療法などについて述べたい。