抄録
糖尿病は虚血性心疾患の発症、進展における独立した危険因子であり、動脈硬化の進展が早く、冠動脈疾患による死亡率も高いことが知られている。また、糖尿病は二次性高脂血症発症の主たる要因と考えられており、高脂血症の合併頻度も高く、糖尿病に高脂血症が合併すると冠動脈疾患のリスクを著明に増大させる。一方、糖尿病に合併する高脂血症(コレステロール、トリグリセライドとも)の治療が優れた冠動脈疾患予防効果を示すことも明らかになっている。 通常、2型糖尿病は時間の経過とともに大血管障害の進展をもたらす。United Kingdom Prospective Diabetes Study (UKPDS) では、2型糖尿病と診断後10年の間に、患者の22_%_が心筋梗塞や脳卒中、狭心症を発症し、その1/3が、それらの合併症により死亡する。対照的に、2型糖尿病に特徴的な細小血管障害は、初期段階では少なく、臨床症状が認められるのはわずか12_%_であり、それが原因で死亡することはまれである。したがって臨床的には明らかに心血管障害の方が重大な合併症と考えるべきである。2型糖尿病におけるLDL-コレステロールの上昇とHDL-コレステロールの低下は、心血管障害のリスクの増加と強い相関関係がある。LDL-コレステロールが上昇すると、リスクは急激に増加し、その増加率は他の危険因子よりもはるかに高い。心血管障害の危険因子をCOX多変量解析で段階的に分析すると、最も影響の大きいものがやはりHDLとLDLであり、HbA1c、収縮期血圧、喫煙が続いている。これらは「死の五重奏」といわれ、非糖尿病者の危険因子とほぼ同様(HbA1c以外)である。意外にも2型糖尿病患者では、網膜症や微量アルブミン尿、インスリンは危険因子とされていない。一方、高トリグリセライド血症については、レムナントやsmall,edense LDLと関連し、最近では食後の高脂血症が危険因子としてクローズアップされている。 以上、ここでは致死的な合併症としては明らかに心血管障害の方が3大合併症よりも臨床的に重要と考えるべきことと、そのためには血清脂質とくに高LDL-、低HDL-コレステロールおよび食後高トリグリセライド血症の管理が必須であることを強調したい。