糖尿病学の進歩プログラム・講演要旨
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セッションID: CL-10
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レクチャー:糖尿病療養指導に必要な知識(2)
急性合併症:昏睡、低血糖、シックデイなど
*石田 俊彦
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抄録
 糖尿病患者の急性合併症では、適格な診断と迅速かつ適切な治療が要求される。その中で最も重要なものは、意識障害である。今回は意識障害で受診した症例を提示して、問題解決志向に基づいた診断過程を紹介し、それぞれの原因に対しての適切な治療指針を示す。 まずこの意識障害が、脳血管障害や心血管障害、薬物、外傷、あるいは代謝障害によるものかを鑑別しなければならない。そのあと、高血糖によるものか、低血糖によるものかを速やかに診断する。低血糖であれば、グルカゴンの静脈内注射と、ブドウ糖の静脈内投与が速やかに施行されなければならない。低血糖の原因によっては、経過観察が必要である。他方、高血糖の場合は、インスリンの作用不足に加えて、脱水による代謝障害が主たる原因なので、循環動態の管理下に速やか、かつ十分量の補液のもと少量のインスリン持続静脈内投与が行われる。 糖尿病患者が、発熱、嘔吐、下痢、食欲不振などにより血糖コントロールが乱れ、従来の治療方法や生活指導などの一時的な変更が必要とされる状態をシックデイと呼ぶ。その病態は脱水によるものが主であり、摂食不良による異化亢進でケトーシスさらにはアシドーシスも招きやすい。さらにシックデイの時には血中のインスリン拮抗ホルモンが増加していることも治療上でのポイントとなる。従って、臨床上で重要な点は、シックデイ時の病態を理解させて対処方法を充分に指導していなければ、吐き気や下痢、または食欲不振で摂食していないという理由で、低血糖を危惧して内服やインスリン注射を中止すると、ケトーシスやアシドーシスが進行し、脱水状態と相まって危険な状況に陥ることである。そのためには、外来や糖尿病教室、糖尿病教育入院などを通じて患者へのシックデイ対処方法の徹底が不可欠であり、具体的な指導内容を紹介する。
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© 2005 日本糖尿病学会
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