糖尿病学の進歩プログラム・講演要旨
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セッションID: AS-1-3
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シンポジウム:糖尿病における心血管疾患の病態解明の現状
高脂血症の立場から
*平野  勉
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抄録
糖尿病では生命予後を規定する冠動脈疾患(CHD)や脳血管障害が高頻度に発症する。われわれの施設でもCHDの1/3が糖尿病を有し、糖尿病の既往のないCHDでもブドウ糖負荷試験で高率に耐糖能異常と高インスリン血症が検出された。糖尿病における動脈硬化発症、促進には高血糖のみならずインスリン作用不足による脂質代謝異常が深く関与する。糖尿病ではVLDLやIDLの増加による高トリグリセリド(TG)血症、高レムナント血症と低HDL-C血症が顕著に認められる。LDLコレステロール(C)の増加は軽微であるがアポBが増加し、小型高密度LDL(sdLDL)が増加する。VLDLの増加は肝臓からの過剰分泌と異化の低下による。前者には脂肪合成の亢進とアポBの肝細胞内での分解低下が、後者にはリポタンパクリパーゼ(LPL)の低下やアポCI,CIIIの増加が関係する。糖尿病性腎症では低タンパク血症、腎不全の要因が加わるために脂質代謝異常は複雑かつ重症化する。本邦のCHDにおける血清脂質はsdLDL、アポBが増加し、HDL-Cが低下するなど糖尿病と共通した異常を示す。 特にsdLDLを有する症例においては食後高脂血症が著明となる。SdLDLの生成にはインスリン抵抗性が強く関与するが、CHDにおけるsdLDLの顕著な増加はメタボリックシンドロームとの深い係わり合いを示唆している。血糖コントロールは脂質代謝の改善にも大きく貢献するが、それでも高脂血症が是正されない場合は積極的に薬物治療を試みることが大血管合併症抑制には重要である。 フィブラートは糖尿病に特徴的な脂質代謝異常を総合的に改善する。高TG、低HDL-C血症の顕著な症例が良い適応となる。sdLDLも著明に低下させる。スタチンはLDL-C高値例には第一選択薬であり、ガイドラインで定められた基準を達成するようにする。新規のスタチンにはTG低下作用を有するためHDL-Cが増加、LDLが大型化するものがあり選択の幅が広がっている。 インスリン抵抗性改善薬にはsdLDL低下が期待される。最近の大規模薬剤介入試験の成績は糖尿病における高脂血症の是正が動脈硬化疾患の発症予防や進展阻止にいかに有効であるかを明瞭に示しており、血糖コントロールのみならず血清脂質値にも常に注意を払う必要がある。
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© 2005 日本糖尿病学会
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