糖尿病学の進歩プログラム・講演要旨
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セッションID: CL-18
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レクチャー:糖尿病療養指導に必要な知識(3)
緩徐進行1型糖尿病
*丸山 太郎
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抄録
 糖尿病は成因により、1型糖尿病と2型糖尿病に大別される.1型糖尿病は臨床像によって、さらに、劇症1型糖尿病、急性発症典型例、緩徐進行1型糖尿病に亜分類される.緩徐進行1型糖尿病(slowly progressive IDDM;SPIDDM)は我が国の小林によって確立された疾患概念で、発症時にはインスリン療法を必要とせず、2型糖尿病の臨床像を示すが、膵島細胞抗体(ICA)やGAD65抗体が持続陽性で、経過とともに内因性インスリン分泌の低下をきたし、インスリン依存状態へ進行する1型糖尿病を指す.インスリン依存状態に進行したSPIDDMは重篤な糖尿病性合併症を併発することが多く、予後も不良のことが多い.一方、SPIDDMを早期に適切に診断して治療すれば、膵島破壊の進行を抑制することが可能で、いつまでも良好なコントロールを維持することができ、合併症を起こすことなく、高いQOLを維持しつつ、人生を全うできる.SPIDDMを早期に診断して適切な治療を行うことはきわめて重要と言える. SPIDDMの診断にはGAD65抗体の測定がなにより重要であるが、陽性であっても全てがSPIDDMとは限らない.私たちの成績では抗体価が10U/ml以上であることが重要であり、これに加えて、年令やHLA、C-ペプチドの経過などが参考になる. SPIDDMの治療にはスルフォニル尿素薬(SU薬)を用いるべきではなく、早期よりインスリンを使用する.私たちは、1994年より、SPIDDM患者にSU薬とインスリンを投与して経過を調べる前向き研究(Tokyo study)を行ってきた.その結果、SU薬投与群に比べ、インスリン投与群では膵島ベータ細胞の破壊が緩やかであること、すなわち、インスリンによって膵島ベータ細胞破壊が抑制されることが確認された. 本講演では、SPIDDMの概念、診断、治療について、最先端の考え方をわかりやすく概解説する.
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© 2005 日本糖尿病学会
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