糖尿病学の進歩プログラム・講演要旨
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セッションID: CL-20
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レクチャー:糖尿病療養指導に必要な知識(3)
遺伝子異常に伴う糖尿病
*後藤田 貴也
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抄録
糖尿病の多くは複数の遺伝因子の組み合わせ(体質)と環境因子との相互作用のもとに発症する多因子性疾患であり、2型糖尿病はその代表といえる。遺伝因子の存在は、同胞に2型糖尿病患者をもつ者ではそうでない者に比べて2型糖尿病の発症リスクが3.5倍程度高いことなどから示されている。2型糖尿病の遺伝因子の同定は長い間「遺伝学者の悪夢」と形容される程困難を極めたが、ここ数年間の進歩によりその発症に関わる遺伝因子の大まかな枠組みが明らかになってきた。すなわち、罹患同胞対を用いた多数のゲノムワイド連鎖解析の結果、大多数の報告によって連鎖が支持される染色体領域は見当たらず、2型糖尿病の発症に決定的な役割を果たす遺伝子(major gene)は存在しないものと考えられている。むしろ、インスリンの分泌や感受性に影響を与えうる多数の疾患感受性遺伝子の軽微な変異や多型の蓄積が、各々の遺伝子間や環境因子との間で相互作用を及ぼしながら、徐々に糖代謝に破綻をきたして2型糖尿病の発症に至るというシェーマが浮かび上がっている。一方で、幾つかの比較的稀な単一遺伝子型の糖尿病の原因遺伝子が明らかにされている。例えば、ミトコンドリア遺伝子の変異では、母系遺伝する糖尿病と感音性難聴が特徴的であり、日本人の糖尿病の1%程度を占めるといわれている。また、MODYは、常染色体優性遺伝形式をとるインスリン分泌低下を主徴とした若年発症型の糖尿病であるが、MODYの1~6に対する原因遺伝子が明らかにされている。その他にも、高率に糖尿病を伴う、肥満や脂肪萎縮に関連した遺伝病の原因遺伝子も幾つか知られている。臨床上、これらの特殊な糖尿病に遭遇する機会は多くはないが、それらに関する知見は一般的な糖尿病の病態や成因を理解する上で重要な情報を与えてくれる。本レクチャーでは、一般的な糖尿病の発症に関わる遺伝因子と、幾つかの比較的稀な単一遺伝子型糖尿病の原因遺伝子に関するこれまでの知見をレビューして述べる。
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© 2005 日本糖尿病学会
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