抄録
家族の多様性は現代の家族研究をする上で前提である。生殖補助医療と家族というテーマも、家族の多様性という視点から考えることができる。ここでは、家族の多様性を家族の内の多様性と家族の外の多様性に区分する。後者は家族相互に多様であるということである。前者は、家族のなかが多様であるということであり、その多様性は、非配偶者(第三者) が関わる生殖補助医療によって、父親あるいは母親が複数存在するというかたちで現れる。ベック夫妻の<世界家族>は、この家族の内に多様性を有する家族を指している。グローバリゼーションは、家族相互の多様性、つまり家族の外の多様性の段階から、家族の内の多様性=<内的グローバリゼーション>を包含する段階となっている。本稿では家族の内の多様性が持つ社会学的なふたつの問いを提起している。ひとつは、出自を問うことの相対化であり、もうひとつは、社会の多様性(=家族の外の多様性)の統合/融和への貢献である。