抄録
本稿は、「都市批判」という視点から都市の家族規範を考察し、これまでの家族研究において前提とされてきた「農村対都市」という対比構造を再考する試みである。具体的な分析対象として、1935年9月から1941年11月まで産業組合中央会より刊行された月刊誌『家の光』都市版をとりあげる。『家の光』はもともと農村家庭向け雑誌として刊行されているが、都市版は都市向けに内容が差し替えられており、主な読者は農村出身の都市労働者の家庭である。分析に際しては、「家庭記事」という分類の差し替え記事に着目した。その結果、都市の文化を浪費文化とみなす都市批判が展開され、都市家庭の模範とすべき対象が堅実な農村であり、共同体の中の家庭が強調されていた。また、都市版と農村版との共通項として、「主婦」役割の重要性が見出された。つまり、都市版において、農村の文化が受容された言説が語られており、都市と農村が相互に影響し合う関係が考察された。