家族研究年報
Online ISSN : 2189-0935
Print ISSN : 0289-7415
ISSN-L : 0289-7415
40 巻
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
シンポジウム報告
  • 和泉 広恵
    2015 年 40 巻 p. 1-5
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/11
    ジャーナル フリー
  • ―非配偶者間人工授精は誰のための処置だったのか?―
    由井 秀樹
    2015 年 40 巻 p. 7-23
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/11
    ジャーナル フリー
        人文・社会科学分野では、男性と不妊をめぐる問題はほとんど議論されてこなかった。本稿では、戦中期から戦後初期にかけての産婦人科医の言説を、母性保護概念と不妊医療、とりわけ非配偶者間人工授精に着目して分析し、このような状況が形成された背景を検証した。そして、家族研究における生殖補助医療技術をめぐる議論を進展させるための素材を提示しようと試みた。
        結果、以下の点が示された。第一に、非配偶者間人工授精は、男性不妊への対処法であることは確かである。しかし、妊娠・出産と子育てが一体のものとして捉えられる母性保護概念との関係もあり、不妊男性を夫に持つ女性を救済するための処置として施術されていた面が強かった。第二に、非配偶者間人工授精は、提供精液を使用するという理由で、終戦時の家族をめぐる規範と対立する面がありながらも、戦後改革で志向された「夫婦単位の家族」という価値と接合可能な面を有していた。
  • 渡辺 秀樹
    2015 年 40 巻 p. 25-37
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/11
    ジャーナル フリー
        家族の多様性は現代の家族研究をする上で前提である。生殖補助医療と家族というテーマも、家族の多様性という視点から考えることができる。ここでは、家族の多様性を家族の内の多様性と家族の外の多様性に区分する。後者は家族相互に多様であるということである。前者は、家族のなかが多様であるということであり、その多様性は、非配偶者(第三者) が関わる生殖補助医療によって、父親あるいは母親が複数存在するというかたちで現れる。ベック夫妻の<世界家族>は、この家族の内に多様性を有する家族を指している。グローバリゼーションは、家族相互の多様性、つまり家族の外の多様性の段階から、家族の内の多様性=<内的グローバリゼーション>を包含する段階となっている。本稿では家族の内の多様性が持つ社会学的なふたつの問いを提起している。ひとつは、出自を問うことの相対化であり、もうひとつは、社会の多様性(=家族の外の多様性)の統合/融和への貢献である。
投稿論文
  • 木村 未和
    2015 年 40 巻 p. 39-58
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/11
    ジャーナル フリー
        本稿は、「都市批判」という視点から都市の家族規範を考察し、これまでの家族研究において前提とされてきた「農村対都市」という対比構造を再考する試みである。具体的な分析対象として、1935年9月から1941年11月まで産業組合中央会より刊行された月刊誌『家の光』都市版をとりあげる。『家の光』はもともと農村家庭向け雑誌として刊行されているが、都市版は都市向けに内容が差し替えられており、主な読者は農村出身の都市労働者の家庭である。分析に際しては、「家庭記事」という分類の差し替え記事に着目した。その結果、都市の文化を浪費文化とみなす都市批判が展開され、都市家庭の模範とすべき対象が堅実な農村であり、共同体の中の家庭が強調されていた。また、都市版と農村版との共通項として、「主婦」役割の重要性が見出された。つまり、都市版において、農村の文化が受容された言説が語られており、都市と農村が相互に影響し合う関係が考察された。
  • ―「家」の民主化と「家族」の民主化―
    本多 真隆
    2015 年 40 巻 p. 59-76
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/11
    ジャーナル フリー
        有賀喜左衛門は、「家」についての実証的研究で名が知られるが、その政治的立場に着目されることは少ない。しかし有賀は、戦後の革新陣営や保守陣営とは違うかたちで、「家」と「民主主義」について多くの議論を展開していた。本稿は、有賀の「家」と「民主主義」についての議論を、彼の「家」に対する問題意識と照らし合わせながら分析し、またその議論が戦後の家族研究においてどのような立ち位置にあるかを探る。 検討の結果、「家」が「民主化(近代化) 」していくという、有賀の問題意識と視座が明らかになった。結論部では、有賀が提示した視座を「家族」の民主化ではなく、「家」の民主化と位置づけ、その展望について論じた。
  • ―民主主義の視点からの考察―
    神谷 悠介
    2015 年 40 巻 p. 77-91
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/11
    ジャーナル フリー
        本稿では、インタビュー調査に基づき、ゲイカップルの生活領域における意思決定プロセスを明らかにすることによって、パートナー関係における民主主義を考察することを目的とする。研究の結果、ライフスタイル上のロールモデルの不在という状況下で、パートナー間において交渉により合意に至る民主主義のプロセスが展開されるという先行研究の知見が支持された。その一方で、意思の相違や力関係、ヘテロノーマティビティが民主的な意思決定に支障をきたすことが示された。以上を踏まえ、パートナー関係における民主主義に困難性が生じる場合の意思決定モデルの構築の必要性が明らかになった。
書評
feedback
Top