家族研究年報
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研究ノート
米国における後期近代の新たな愛/親密性の理念の検討
―自己の位置づけと心理学・セラピーの影響に着目して―
栗村 亜寿香
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キーワード: 愛/親密性, 自己, セラピー
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2023 年 48 巻 p. 91-106

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抄録

    本稿では米国における後期近代の愛や親密性の理念を文化的観点から検討する。まず A.ギデンズの親密性論や先行研究の検討から、米国における後期近代の愛の理念の検討にあたってセラピーや自己の位置づけといった文化的側面に着目する必要があることを確認する。次にこの観点から選定した複数の文献をもとに、1970年頃に米国で台頭した愛の理念の特徴とその背景を検討した。その結果、新たな理念の特徴は、男女の自律や平等、交渉が重視され、感情表現や自己開示を通じた親密なコミュニケーション、夫婦間の問題への取り組みに価値がおかれる点にある。また、この理念の形成には1960年代後半頃から大衆的に拡大したセラピー的な運動や、結婚に対する従来の立場を変更したセラピーの動向、第2派フェミニズムが影響を与えている。後期近代の家族や親密性の変容は、社会・経済的、制度的側面だけでなく、文化的側面の検討も重要であることを指摘した。

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© 2023 家族問題研究学会
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