地球科学
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埼玉県入間川流域の鮮新-更新統,上総層群産のネクイハムシ亜科の再検討および絶滅種ブシミズクサハムシの系統関係
林 成多
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1999 年 53 巻 1 号 p. 38-52

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抄録

埼玉県南西部の加治丘陵および入間川流域に分布する鮮新-更新統の上総層群から産出したネタイハムシの化石について再検討を行った.その結果,仏子層(前期更新世)からはオオミズクサハムシPlateumaris constricticollis,ブシミズクサハムシPlateumaris dorsata,フトネクイハムシ近似種Donacia cf. clavareaui,フトネクイハムシ亜属の1種Donacia(Donaciomima)sp.,コウホネネクイハムシ近似種Donacia(Donacia)cf. ozensis,イネネクイハムシ亜属の1種Donacia(Cyphogaster)sp.の6種を確認した.また,仏子層の下位層である飯能礫下部層(後期鮮新世)からもオオミズクサハムシとフトネクイハムシ近似種が産出した.仏子層および飯能礫層から産出したネクイハムシの化石には,後期鮮新世から前期更新世のネクイハムシ相には現生種と絶滅種の両方が含まれていることを示している.さらに,関東地方の各地から報告された中期更新世と後期更新世のネクイハムシの化石には現生種のみが含まれており,より古い時代の後期鮮新世から前期更新世のネクイハムシ相とは種構成が異なっている.絶滅種とされるブシミズクサハムシは仏子層から記載されたミズクサハムシ属の1種である.原記載以降,本種の系統関係を推定する上で重要ないくつかの形質が観察された.本種は近縁種のヒラシマミズクサハムシPlateumaris weiseiとの共通祖先から前期更新世以前に旧北区東部で分化し,北米に分布する姉妹種のP. germariは本種から派生した種であることが,これら3種の新たに得られた系統関係,化石記録,地理的分布から推定される.

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© 1999 地学団体研究会
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