地球科学
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地球化学図を用いた仙台市周辺地域の元素挙動の解明と環境評価
太田 充恒今井 登岡井 貴司遠藤 秀典石井 武政田口 雄作上岡 晃御子柴(氏家) 真澄寺島 滋
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2003 年 57 巻 1-2 号 p. 61-72

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抄録

臨海平野部における代表的な都市地域である仙台市において,地球化学図を用いた自然のバックグラウンドの見積もりと環境汚染の評価を行った.対象試料として,河川堆積物73試料を採取し,51元素の化学分析を行った.また,新たな試みとして,0.1N塩酸可溶性成分の地球化学図も作成した.調査地域には酸性凝灰岩を含む堆積岩が広く分布し,一部の地域に塩基性岩類が分布する.一部の元素を除き,二つの地球化学図はいずれもこの背景地質を反映した特徴を示した.バルク組成に対する希塩酸可溶性成分の占める割合に着目したところ,銅,亜鉛,鉛などの有害元素は溶出率が40-70%と高く,河川堆積物中では溶出しやすい状態で存在していることが明らかになった.地球化学図を用いた環境評価では,水田地域にリンの高濃度分布と高い希塩酸溶出率が認められ,農業活動に伴う人為的な汚染が確認された.しかし,人為的活動の活発な市街地域においては,水質汚染は認められたが,地球化学図からは汚染は認められなかった.これは,水圏と地圏における元素の拡散・移動速度の違いや汚染源の違いが表れたためであり,人為的な汚染のすべてが地球化学図に認められるわけではない事が明らかになった.

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© 2003 地学団体研究会
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