地球科学
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東北地方南部太平洋沿岸における最終間氷期堆積物の化石と古環境
竹内 貞子
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2005 年 59 巻 1 号 p. 25-34

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抄録

東北地方南部太平洋沿岸に分布する最終間氷期堆積物のうち,福島県阿武隈山地東縁の塚原層と宮城県宮城野海岸平野南部の岩沼層(新称)は海成層である.岩沼層についてNT1, IW1, IW2の3地点から得られたボーリングコアの試料の珪藻分析と花粉分析を行った.塚原層については,含有花粉化石の再検討を行った.岩沼層の珪藻分析の結果は,この層の堆積環境が,最終間氷期の海面変動によって"古阿武隈川"の氾濫原から次第に浅い内湾となり,その後再び干潟から氾濫原へと変化したことを示している.岩沼層の花粉分析の結果と塚原層の花粉化石の再検討の結果から,最終間氷期最高海水面期(MIS5e)に,サルスベリ属は東北地方南部太平洋沿岸に少なくとも岩沼まで分布をひろげていたことが明らかになった.このことは,当時この地域が暖冬型の温暖な気候に支配されていたことを示唆する.

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© 2005 地学団体研究会
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