地球科学
Online ISSN : 2189-7212
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地震波トモグラフィによる東北日本弧の深部構造と造構運動(<特集>島弧の深部構造-地質・地震・地震波トモグラフィによる解析(I))
長谷川 昭中島 淳一
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2009 年 63 巻 4 号 p. 201-210

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抄録

最近の研究によって推定された太平洋(PAC)プレート及びフィリピン海(PHS)プレートの形状,さらに地震波トモグラフィにより映し出された東北日本弧の深部構造と内陸地震発生・マグマ生成モデルについて紹介する.基盤地震観測網データを用いた解析により,日本列島下に沈み込むPACプレートとPHSプレートの全容が明らかとなった.PHSプレートは伊豆半島北方でも裂けることなく,関東から九州に至る全域で連続して分布する.PHSプレートは関東下でPACプレートと接触しており,それがPHSプレートの波板のような形状をつくる,大きな変形の原因の一つと推定される.地震波トモグラフィにより,東北日本弧下のマントルウェッジに,傾斜したシート状の地震波低速度域が写し出された.スラブ沈み込みに伴う二次対流の上昇流部分に相当すると推定される.上昇流は火山フロント直下でモホ面に達し,それにより火山フロントが形成される.上昇流にはスラブ起源の水が取り込まれ,島弧地殻にまで運ばれる.この水は地殻物質を軟化させ,現在の圧縮応力場のもとで,そこに短縮変形を集中させる.この局所的な短縮変形に伴って,変形を一様化するように内陸地震が発生すると推定される.日本列島に最近発生した内陸地震については,地震波トモグラフィで震源域周辺の詳細な構造が推定されているが,それらは上記の発生モデルを支持するようにみえる.

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© 2009 地学団体研究会
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