2011 年 65 巻 5 号 p. 185-197
室生火砕流堆積物(MAFT)は中新世に噴出した大規模な溶結凝灰岩である.MAFTは近畿地方中部に最大層厚400mで100km^2以上分布する,主に結晶ガラス質凝灰岩である.MAFT基底部の層厚約20mのB3層は顕著なレオモルフィズムを示す.それはMAFTの分布する南端部の限られた地点に露出する.白色の結晶ガラス質凝灰岩(CT)と灰色から黒色の石質凝灰岩(LT)で構成される.CTとLTは薄層からフィルム状に互層する層状部と,不定形の白色CTと黒色LTが混在するマーブル部がみられる.B3層の多くの特徴はhigh-gradeイグニンブライトでのBranney and Kokelaar(1992)のレオモルフィック変形モデルで説明される.層状部はMAFTに生じたhigh-concentration particulate flowの基底およびその付近でagglutinationとnon-particulate flowで形成されたものである.層状部の面構造がしばしば変化しているのは流れが安定でないことを示す.Non-particulate flowが大きいLTのブロックを形成すると,白色のCTと変形しながら混在し,マーブル部となったと考えられる.