地球科学
Online ISSN : 2189-7212
Print ISSN : 0366-6611
インド洋底の大陸性岩石 : 海洋底に分布する大陸性岩石の意義
矢野 孝雄Boris I. VasilievDong R. Choi宮城 晴耕Alexander A. Gavrilov足立 久男
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2011 年 65 巻 5 号 p. 199-215

詳細
抄録

インド洋底に産出した大陸性岩石を記載・分類し,大西洋・インド洋・太平洋に分布する古期・大陸性岩石の意義を整理するとともに,それらと海洋形成論とのかかわりを考察した.インド洋底では34地点から大陸性岩石の産出が報告されていて,タイプA(大陸縁において海洋底深度よりも深所に存在する大陸性岩石:11地点),タイプB(中央海嶺〜海盆部に分布する大陸性地殻岩石:14地点),タイプC(同域に分布し,大陸性リソスフェア物質由来の地球化学的特徴をもつ岩石:9地点)に分類される.大西洋・インド洋・太平洋では,計86地点で古期・大陸性岩石が報告されている.タイプAは大陸の縁辺部が海洋底に転化したことを示し,それは海洋形成論の共通認識になっている.タイプBは中央海嶺〜海盆域に大陸性岩石が散在することを,タイプCは同域に大陸性岩石が少なくとも部分的に伏在していて,加熱・マグマ活動にともなってさまざまな程度に融解したことを,それぞれ示す.タイプB・Cの岩石は,海洋底拡大説にメカニズムの追加を余儀なくさせ,海洋化説や微膨張説には物的証拠となる.地球上の2つの巨大環状構造-Dupal異常帯と環太平洋変動帯-は,マントルの大規模な熱-化学的不均質構造と低流速性を反映する.タイプBおよびCの岩石は,マントルの不均質構造と低流速性という拘束条件とともに,海洋形成過程を解明するための鍵になる.

著者関連情報
© 2011 地学団体研究会
前の記事
feedback
Top