地球科学
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総説
本州中央部における鮮新世以降の隆起運動の特徴と海水準上昇
柴 正博
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2021 年 75 巻 1 号 p. 37-55

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抄録

日本列島の第四紀地殻変動は,山地の急速な隆起と沿岸および内陸盆地の相対的な沈降を引き起こした.本州中央部における36地域の鮮新世から第四紀の堆積物の年代層序学と岩相分析により,造構-堆積史が次の4つのステージで発達したことが明らかされた.1)鮮新世~前期更新世前期には,内陸盆地が発生し,深海盆にタービダイトが堆積した.2)前期更新世後期~中期更新世前期には,島弧の隆起が起こり,内陸盆地の沈降域は拡大して分化し,海域では斜面がファンデルタによって埋積されて扇状地が拡大した.3)中期更新世後期には,島弧の地殻隆起が加速され,同時に沿岸盆地には海水準変動に対応した堆積物が累積した.4)後期更新世以降は,海水準の下降と地殻の隆起で段丘が形成された.このような第四紀地殻変動の特徴は,島弧地殻の大規模隆起と海水準変動によって形成されたものと考えられる.特に中期更新世後期(43万年前)以降には,新たな大規模隆起運動と海水準が約1,000 m上昇して,現在の地形が形成された可能性がある.

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