抄録
台湾(国名としては「中華民国」)の著作権法第1 条には,著作者や著作権者の権利保護のみならず,社会の公共の利益や,国家の文化的発展をも保護することを目的とするとしている。そして,これを具現化するかのように台湾著作権法には,著作権の保護よりも国家利益や産業保護を重視するかのような規定が見受けられる。本稿は,台湾著作権法を概
観し,このような「権利者保護」以外の思想を確認し,これをもって台湾著作権法の根底にある思想を明らかにすることを目的とする。その結論としては,台湾著作権法には一部の規定のみだが,確実に「権利者保護」以外に重要視している思想があり,台湾には「アジア的な思想」といわれる「著作権法違反に対し寛容的な思想」も存在しているといえる可能性があると指摘する。