抄録
本研究は,福岡県における市町村人口の変遷を分析し,将来の動向をマルコフ連鎖による確率モデルで説明する。福岡県には60の市町村が存在し,15の地域ブロック(圏域)ならびに4つの地域にわけることができる。これら個別の人口を県人口からの比率に変換し,人口比率の変遷と時間との相関関係で調べた結果,福岡市およびその周辺市町村の多くで人口比率が増加しているのに対し,他の市町村はおおむね人口比率が減少していることが分かった。この結果に基づき,4地域ならびに県外や海外を含めた多地域の確率モデルを推計し,人口比率の収束分布を求めることで,将来動向を分析した。結果,福岡市を中心とした地域に人口がより集中することが分かった。さらに,確率モデルに変化を与え,収束分布の変化を求め,人口減少を食い止める方法を考察した。結果として,他地域への流出人口を抑制するよりは,他地域からの流入人口を増やす方法が効果的であることが判明した。