東アジアへの視点
Online ISSN : 1348-091X
経済成長における貿易の役割の再検討
坂本 博
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2021 年 32 巻 2 号 p. 80-95

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抄録
 本研究は,経済成長における貿易の役割について,長期の世界データを用いて分析したも のである。ここでは,経済成長を示す指標として,1 人当たりの実質GDP の相対値を用い, 貿易を示す指標として,純輸出率と貿易率を用い,それぞれの相関係数を計測した。結果と して,純輸出率と相対所得との関係は非常に弱い正の関係で,これらの1 階差分については, 若干の正の関係が見られた。貿易率と相対所得との関係は若干の正の関係が見られたものの, これらの1 階差分では,負の関係となった。これらから,開発経済学に見られる「輸出工業 化戦略」および伝統的な貿易論で見られる「貿易の利益」はいずれもデータから読み取れる ことが判明した。しかしながら,アジアを中心とした個別経済で確認すると,輸出工業化戦 略が成功した経済は,日本,韓国,台湾および中国と非常に限られていることが分かる。た だし,これらは,純輸出率と相対所得の1 階差分では,相関が見られず,世界データとは異 なる結果となっている。また,これらの4 つの経済およびマレーシア,タイ,インドは,貿 易率との相関も高く,貿易の利益が得られていることが判明した。
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© 2021 公益財団法人 アジア成長研究所
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