抄録
本論文は,台湾・高雄市における近年の産業革新の取り組み,とりわけスタートアップ推進について体系的に解説することを目的としている。高雄市は重化学工業を主体に発展してきた歴史があり,近年,産業構造の転換,企業のDX推進,環境汚染対策の必要性が叫ばれていた。産業革新に向けた高雄市の取り組みの中心は,半導体をはじめとするハイ
テク・新興産業分野での園区・工業区の開設・拡張である。これらの園区・工業区を地図上で線でつなげるとS 字にみえることから全体として「南台湾ハイテクS字型回廊」と呼ばれている。また,その中には半導体関連企業が立地するものも多く,「南台湾半導体S 字型回廊」とも呼ばれる。S 字型回廊の終端には,国内最大の5G AIoT 実証実験・商業化エリアとして「亜灣5G AIoT 創新園区(Asia New Bay Area 5G AIoT Innovation Park)」が開設され,その中に国際スタートアップ基地の「亜灣新創園(Startup Terrace Kaohsiung)」も設立された(2021 年)。高雄市が5G・AIoT・デジタル技術の発展・応用をリードし,また従来型産業との連携により大々的にDXとGXを推進できるようにする狙いがある。加えて,その重要な担い手の1 つであるスタートアップを誘致・支援し,創業エコシステムにおける国際連携を進めることも期待されている。本論文では,デジタル技術の応用やグリーン経済への転換ではどちらかというと後れを取っていた高雄市が,近年の積極的な取り組みにより,台湾でも先端的な地位に躍り出ようとしている様を描き出す。