東アジアへの視点
Online ISSN : 1348-091X
中国におけるESG 投資: 現状,課題と最近の取り組み
戴 二彪
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キーワード: ESG投資, 中国, 上海
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2024 年 35 巻 2 号 p. 14-25

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抄録
2006 年に国連が「責任投資原則(PRI)」を提唱して以来,企業が環境(Environment),社会(Social),およびガバナンス(Governance)の3 つの領域において実施した活動による持続可能な発展への貢献も考慮したESG 投資が注目されつつある。特に,2015 年に国連が17 のSDGs を打ち出して以降, SDGs 戦略の実現に効果的に促進できるESG 投資はより多くの国で支持されるようになった。中国において,欧米や日本と比べ,ESG 投資の開始が遅れたが,2021 年に中国政府がカーボンピークアウト・カーボンニュートラルというダブルカーボン目標を打ち出してから,中国の金融界・産業界において,ESG 投資・ESG 経営への関心が高まっている。ただし,ESG 関連情報の開示率と質,評価機関の信頼性,およびESG 評価の国際連携と海外発信などについて,まだ多くの課題が残っている。国のSDGs 戦略におけるESG 投資の役割を果たすために,中国における最も重要な国際貿易・国際金融都市であり最大の経済中心都市である上海は,強い責任感を持っている。上海のESG 関連施策では,その都市特性や多国籍企業・国際業務関連企業の示範的役割を活かしながら,上海および中国全国の主要企業のESG 経営水準の向上に向けて,重要なリーダーシップを発揮している。
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© 2024 公益財団法人 アジア成長研究所
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