抄録
1970 年代の日本では,地方圏から大都市圏への人口移動が急激に減少し,それと並行して日本の経済成長率も急激に低下した。本稿の目的は,1970年代における,この人口移動の低下原因を定性的に明らかにすることである。
大都市圏への人口移動の要因としては,①地方圏人口の減少,②大都市圏と地方圏間の所得や生活環境格差の縮小,③短期的な有効求人倍率の変動,が考えられる。
本稿は,1970年代において,全年齢層においても,中学・高校の新卒者においても地方圏人口の減少が大都市への人口移動減少をもたらした最大の要因ではないことを明らかにする。全年齢層については,大都市圏と地方圏間の所得や生活環境格差の縮小,および,有効求人倍率の地域間格差の縮小が大きな要因である。次に,新卒者にとっても,地方圏の1人当たり所得の相対的な改善と,社会資本ストックの相対的改善が,移動減少の大きな決定要因と
なっている。
最後に,1960年代および70年代に行われた「国土の均衡ある発展政策」が,1970年代に所得や社会資本ストックの地域間格差を縮小させ,大都市圏への人口移動の急激な減少をもたらした可能性を示す。