抄録
【緒言】HIV感染症治療はプロテアーゼインヒビターを含めた多剤併用療法により、いままでにない強力な治療効果を得ることが可能となった。この多剤併用療法において服薬コンプライアンスは治療の成否を決定する最も重要な要因の一つである。従って有効な抗HIV療法のためには医療者・患者間で服薬に関する綿密な打ち合わせが不可欠となり、患者の理解を助けるツールが必要となる。
【方法】このツールには(1)薬剤の名前と薬剤の写真、(2) それぞれの薬剤の内服の時間、注意事項、主な副作用の記載、(3) 患者それぞれの生活パターンの記載が必要であるため、以上(1) (2) (3) の情報を総合した印刷物として服薬援助シートを開発した。
【結果】このシートによって患者は有効な服薬方法で薬を服用でき、服薬困難な薬剤、時間を医療者に提示しやすくなる。また医療者はこのシートによって、患者それぞれに最も有効と思われる処方を考えやすくなる。さらに医療者間での意思統一にも、すでに内服を開始している患者の服薬状況の再確認にも使用可能である。
【考察】このシートによって処方を書く医師が、患者の服薬継続の困難さを、薬剤名、用量、用法、投薬日数の4つの情報しか含まれていない処方箋よりも、はるかに強く実感できることが、処方を工夫しようとする動機付けに役立ち、良い治療につながると思われる。